……。」
「どう出るかって?――」
後《あと》は笑談のように笑いながら、
「そんなこと岸野の農場で十年も小作をしていれば、もう分ってもいい頃だろう――なア!」
皆笑ってしまった。
聞き易いテキパキした調子で、時々笑わせながら、色々のことを話してくれた。
――秋田には「青田を売る」ということがある。それは新らしい小作戦術で、立毛差押や立入禁止など喰らいそうに思うと、小作人が先手を打って、夏頃に、出穂を予想して、青田のうちに商人に売ってしまうのだった。金にして持ってしまえば、こっちのものだった。――どうだい、やってみないか、と荒川が笑談のように云った。
近辺の農村を廻って歩いていると、農村の生活水準がだんだん下って行くのが分る。益※[#二の字点、1−2−22]下がって行く。いくら村長や警察署長が「農村の美風」をかついで、ムキになったって、食えなくなれば、どうしても地主様に「手向い」しなければならなくなる。
それに、こうなって来ると、困るのは水呑み百姓ばかりでなしに、なまじッか十町、二十町歩位の田畑を持っている「地主」で、反当りで計算してみても、灌漑費、排水費、反別割、其他の税金
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