「親子みんなで」に傍点]行きたいッてよ。」
「ドン百姓からばかし兵隊とりやがるんだものな。一番多いそうだ。」
「嘘か本当かな。」――阿部が云った。「こんなこと聞いたど。村長が徴兵検査に行ったもののうちで、採否の分らねえようなものに、こっそり血書[#「血書」に傍点]ばさせて、村の名誉にしようとしたって……。」
 皆一寸だまった。「へえ!」
「んかな……。」
「まさかよ。」
「俺ありそうだって思うんだ。」――阿部は何時もの癖で、自分の手の爪の先きを見ながら、隅の方でゆっくり云った。
「村長一人の考えからでもないんだ。糸をひいてる奴がいるんだ。――農村青年の思想悪化だなんて、彼奴等青くなってるんだから夢中よ。――此頃の北海タイムスや小樽新聞の農村欄ば見れ。ヤレ農村美談だ、ヤレ何々村の節婦だ、孝子だ、ヤレ何青年団の美挙だ、ヤレ何の記念事業だッて、ムキになって農村の太鼓ばたたいているんでねえか。――所が、実際の農村はどうだ。――彼奴等は死物狂いだんだ。何時迄も百姓ばジッとさせて、何時迄も勤勉に仕事ばさせて置くためには、新聞でこい、雑誌でこい、紀元節でこい、徴兵検査でこい、青年訓練所でこい、機動演
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