かって、裏で雌鶏を一羽つぶした。※[#「┐<△」、屋号を示す記号、289−下−20]からは、「兵隊さんに出すのだから」と云って、ようやく酒を一升借りて来た。
 酔ってくると、兵隊は色々「兵営」の面白いことを話してきかせた。由三は「眠くねえわ、眠くねえわ。」と眼をこすりながら、何時迄も起きていた。
「坊、大きくなったら兵隊になるか。――ハハハハハハ。」
「僕も百姓ですよ。」と一人が云った。「僕の従弟が内地の連隊にいたとき、自分の村で小作争議が起り、それがドエライことになってしまった事があるんです。半鐘は鳴り、ドラはなり、何千人ッていう小作人が全部まア……暴動ッて云うかね、それを起したんですね。どうにもならなくなり、地主連が役所に頼み、役所が連隊に頼み、軍隊出動という処までトウトウ行ってしまったわけです。――が、何んしろその兵隊さんの親、兄弟、親類が村にいるときているし、それに自分等も村にいたとき、毎日毎日地主に苦しめられてきている。――どうにも出来ない。とても苦しかったそうですよ……。」
「ハアねえ――。」母親はワケも分らずうなずいた。
「あんまり御馳走してくれるんで、思い出したんだけれ
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