が、土方達はどうする……」
 帰り道は、身体中痛んだ。肩がはれ上って、ウミが出た。
「土方人間で無えべ。――土方と人間が喧嘩したって歌あるんだからな……。」
「佐々爺云ってたども、北海道の開拓はどうしたって土方ば使わねば出来ないんだってよ!」
「んだかな。」
「馬鹿云うもんでねえよ!」
 健はムカムカした。
「飯場さ入る時な、皆ば裸にしてよ、入口でヒー、フー、ミー、ヨーッで数えるんだ。――窓って窓は全部釘付けよ。」
 健は明日からもうやめた、と思った。――兵隊にだって、俺達と同じ黒飯を食わしたって構うもんか、要らない見栄なんてしない方がいいんだ、と思った。
 次の朝三時頃、表から仲間が呼んだ。
「俺アもうやめた。」
 行けば行けると思っていたのに、眼がさめると、身体が痛くて匍うことしか出来なくなっていた。
「何んだって※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」――母親がむっくり頭をあげた。
 健はもの[#「もの」に傍点]も云わずに又蒲団をかぶった。
「健――これ健ッ、もう二日我慢してけれ、な、もう二日!」
「続かない。身体|痛《え》たくて、痛たくて!」
 それっ切りだまった。耐え性なく、それ
前へ 次へ
全151ページ中66ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング