も、三重にもハネられた。
大地主は只《ロハ》のような金で、その金の割合の何十倍もの造田が出来た。造田さえされれば、「低利資金」位は小作料[#「小作料」に傍点]だけで、ドシドシ消却出来た。
――健にも分る。これだけのことを見ても、結局の背負いどころは誰か。――小作人と土方! それがハッキリ分る気がした。
「アッ!」誰か叫んだ。
トロッコが土煙をたてながら、顛覆した。裏返えしになったトロッコの四つの車輪だけが、惰勢でガラガラと廻った。――乗っていた土方は土の下になってしまった。然し、誰もそれにかまっていない。――日雇いに行っている健達は思わず立ち止って、息を殺した。
「次のトロッコが矢張りな、見るに見兼ねて、少しグズグズしてたッけア、止っちゃいかん、止っちゃいかんッて、棒頭が怒鳴ってたど。」
健達は今度S村附近に陸軍の演習があるので、その宿割を受けていた。
「兵隊さんだけには、白い飯《まま》食べさせなかったら、恥だからな。」
母親に何度も、何度も云われて、稼ぎに出ていた。然し村から稼ぎに行っているものは、三日と続かなかった。途中でやめてしまった。
「ま、俺達途中でやめれるからええ
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