は他の人のような悪意は感じていなかった。――どの村にも、実際ぐうだらはいたし、居る筈だった。
――然し、何時迄グウだらを繰り返えしたって、どうなるものか、健は此頃はそう思ってきていた。グウだらが悪いんじゃない、グウだらにさせるものがある。それを誰も知っていない、そう思った。
「な、ま、ええさ。今晩飲めるんだ。」
「源、酒の……」
「のべ源」は、分ったよ、分ったよ、という風に頭を振った。伴は「どうしたい。」と、ひやかした。
「模範青年さんにかかるとネ。」頭をかいて、眼を細くした。
「模範青年ッて誰だ※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
健は不機嫌に云うと、そのまま黙ってしまった。
阿部は口の中だけで笑っていた。
「野にいる羊」
女達は酒盛の用意のため、三時から管理人のところへ出掛けて行った。嫁取りだとか、法事だとか、何かのお祝いだとか、そういう事だと、お恵達は誘い合って、喜んで出掛けた。――管理人の家の炊事煙突が、めずらしくムクムク煙をはいていた。裏口から襷をかけて、太い腕をまくり出した女達がザルを抱えたり、葱をもったり忙がしく出入りした。
令嬢は、軽い頭痛を覚え
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