いつ」に傍点]等の着ているペラペラした着物なんて、俺達がみんな着せてやってるんだ位、もう分ってもええ頃だな。」
前を歩いていた小作が振りかえった。
「伴さんにかかると、かなわないね。」
伴もそれと一緒にウハハハハハと大声を出して笑った。
伴は何んでもズバズバ云ってのける癖があるので、地主から一番「にらまれ」ていた。管理人が遠廻しに、小作権を坪幾何の割で買取ってもいいとよく云ってくる。――何時でも態《てい》のいい追い出しを受けていた。が、反対に少しおとなしくしてくれれば、「管理人」にしてやるがという交渉もあった。が、その度に伴のあたりかまわない「ウハハハハハ」に気をのまれて帰って行った。
「な、ええオ――イ、勝見さんよ、ボヤ、ボヤしてると、キンタマの毛ッこひん抜かれてしまうべよ。」
大きな声で前のに云うと、又ウハハハハハと笑った。
「ハハハハハハハハ。」――向うでも笑っている。
黙っていた阿部が、「伴さん、晩に管理さんのとこさ行ぐ時、一寸寄ってけねか?」と云った。
「ん、ん。」
伴は着物をまくって棒杭のような日焼けした、毛むじゃらの脛を出して、足をいたずらにブラブラさせたり、
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