の突端へ並んで腰を下ろし、足をブラブラさせた。河はくねって、音もたてず、「流れ」も見せずに流れていた。――深かった。
音はしていても、なかなか発動機船は姿を見せなかった。
そして、ひょッこり――まるっきりひょっこりと、青ペンキの姿をあらわした。青空に透きとおるような煙の輪を、ポンポン順よく吹き上げながら、心持ち身体をゆすって、進んでいるか、いないか分らない程の速さで上ってきた。艀《はしけ》を後に曳いていた。と、皆は手と足を一杯に振って、雀の子のように口をならべて、「万歳!」を叫んだ。
舵機室と機関室から、船の人が帽子を振って何か云った。皆は喜んで、又「万歳!」を叫んだ。
「な、あのバタバタッてのな。」――由三が隣りの奴の手をつかんで、自分の胸にあてた。「な、胸ドキッドキッてるべ、これと同じだんだとよ。――あれ船の心臓だとよ。俺の姉云ってたわ。」
「んか――?」
「嘘こけッ!」――三人目が首を突き出した。「あれモーターッてんだ。」
「モーター? モーターッたら、灌漑溝の吸い上げでねえか。えーえ、異うわ、覚《おべ》だ振りすなよ!」――由三は負けていない。
「んだ、んだ!」端《はし》の方
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