費道路」に傍点]だんだ。馬鹿にする。又秋、米ば運ぶに大した費用《いり》だ……。」
「兄ちゃ、犬の方強えでアな!」
「んで、どうするッて?」
「暇ば見て、小作人みんな出て直すより仕方が無えべど。――村に金無えんだから。」
「犬だなア、兄ちゃ……。」
「うるさいッ!」いきなり怒鳴りつけた。――「又小作いじめだ! 弱味につけ込んでやがるんだ。放ってけば、どうしたって困るのア小作だ。んだら、キット自分の費用でやり出すだろうッて、待ってやがったんだ。――村会議員なんて、皆地主ばかりだ。勝手なことばかりするんだ。」
S村で、以前、村役場に対して小作争議を起したことがあった。北海道は町村が沢山の田畑を所有していて、それに小作を入地させていた。それで、よく村相手の争議[#「村相手の争議」に傍点]が起った。――然しS村の村会議員が全部地主であったために、後のこともあり、又やがては自分達の方への飛火をも恐れて、頑強に対峙してきたために、惨めに破れたことがあった。
「明日吉本さんの処さでも集って、相談すべアって。」
おはぐろ[#「おはぐろ」に傍点]の塗りのはげた母親の、並びの悪い歯の間に、飯が白く残って
前へ
次へ
全151ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング