ならん。」
 初めて来たとき、小作を集めてそう云った。

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S村――田の所有分布。
 二百町歩――S村所有田
 百五十町歩――大学所有田・「学田《がくでん》」
 百二十町歩――吉岡(旭川)
 五百町歩――岸野(小樽)
 二百町歩――馬場(函館)
 二百十町歩――片山子爵(東京)
 三百町歩――高橋是善(東京)
外ニ、自作農五戸、百五十町歩。
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     「巡査」と「※[#「┐<△」、屋号を示す記号、256−上−12]の旦那」

 市街地には、S村青年団、S村処女会があって、小学校隣接地に「修養倶楽部」を設け、そこで色々な会合や芝居をやる。――会長は校長。副会長には「在郷軍人分会長」をやっている※[#「┐<△」、屋号を示す記号、256−上−16]荒物屋の主人。巡査。それに岸野農場主が名誉相談役となっていた。――健達の通っている「青年訓練所」も、その「修養倶楽部」で毎晩七時からひらかれていた。
 巡査は一日置きに自転車で、「停車場のあるH町」に行ってきた。――おとなしい、小作の人達にも評判のいい若い巡査だった。途中、よく自転車を道端に置き捨て
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