健は始めて伴から頼まれて、小作人の家全部を廻って歩いた。――今度のことはモウ成行きがきまっている。そうなったら一人でもハグれないようにするためだった。――一廻り、廻って来ると、健は他愛なくなる程疲労した。
「ん、ん、ん!」
ときいてくれる隣りでは、何しに来やがった、という顔をした。
「困るには困るども、穏当でねえべもしな。――後がオッかなくてよ。」
そんなことも云う。
「岸野さんだら、一度ウンとやって置く必要あるんしな。」
そして何処ででも、「へえ、健ちゃが、健ちゃがこんな事するようになったのか?」と、不思議がられた。
その度に健は耳まで赤くして、ドギマギした。
然し、たったそれだけの事をしただけで、健は何か大きな自信と云ってもいいものをつかんだように思われた。
「納屋にあるのか?」
健が裏で、晩に食う唐黍をとっていた時だった。
「健ッ! 健ッ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」――母親の叫び声が家の中でした。
その声にただ事でない鋭さを感じて、健はグイと襟首をつかまれたと思った。
家の中にかけ込んだ。かけ込んで――見た。
吉本管理人! 剣! 巡査だ
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