云った。
「ようやく半作よ。」
「小作料納めたら、どうなる?」
「ン――。食うもの無くなるよ。んでも、そこばさ、何んとかウマクやって行くことば考えたらッて思うんだ。」
 吉本にでも頼まれて来たな、と健は思った。
 健は皮肉に云った。――「伴さんがこんな事云ってたが、本当かな。来年の春、H町の議員選挙で岸野さんが出るから、地盤ば荒されないように、今年だけは小作人ば誤魔化した方がええッて蛇吉が云ってるッて、ええ? 俺達食うか、食えないことば、そんなことでどうにも都合するんだナ!」
「…………」武田はだまった。「まさか。」
 武田は話を別な方にそらして、帰って行った。撥の悪さをかくすように、暗い表で、
「明日も天気だ。」
 と云うのが聞えた。
「ああいうのば、犬ッて云うんだ。」――畜生犬!
 ――他の農場では小作料を下げたとか、下げるとか、そんな噂がすぐ岸野農場にも入ってきて、その度に皆をアヤフヤに動かした。
 常任の交渉委員、伴、佐々爺、武田が吉本管理人のところへ何度も足を使った。
「蛇吉の野郎、こんなに事情が分ってて、それで一から十、岸野の肩ば持ちやがるんだ。――今中さはさまって、野郎ジ
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