は鼻をぐじらせた。――「お前どころでねえ、五十何年もよくやってきたもんだて、百姓ば!」
「何時かええぐなるべ、今度こそええぐなるべッてな。――んで、最後に、お気の毒様でしたか、ええもんだ!」
 母親は黙って、鼻をぐじらせた。
 田から上った稲を一粒一粒の米にする。ところが、その米が残らずそのまま岸野に持って行かれてしまう。――それがハッキリ分っている。分っていて、その米を一生ケン命籾にして、殻をとり、搗いて白米にしている。何んて百姓はお人好しの馬鹿者だ!
 武田がひょっこり顔を出した。
「精出るなア。」
「何によ。――見れ、この籾《もみ》。」――母は筵《むしろ》の上にたまった籾を掌でザラザラやって見せた。――
「今、謀叛でも起したくなったッて話してたとこだ。」
 武田はとってつけたように、大きな声で笑った。
「な、健ちゃ、少し相談したいことがあるんだが、仕事終ってからでも、俺の家さ寄ってけねえかな。」
 健はだまっていた。
「今度の不作で、なんだか騒ぎでも起りそうでよ。村の不名誉でもあるし、相互扶助会としても工合が悪いし……」
「君のとこ幾《なん》ぼとれた。」――健は冷たく、別なことを
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