そして、しゃっくり/\云った、「ケイサツが進ばバカにするほど殴ぐったんだ。俺ケイサツば訴え[#「訴え」に傍点]てやる。キット訴えてやる! それに、」と云って、又お前の母をにらみながら、「俺の息子に若しものことがあったら、お前さんの息子ばうらん[#「うらん」に傍点]で、うらんで、うらみ殺してやる!」――窪田や山崎のお母さんが中に立って、上田の母にわけを云い、理をつくして話してやったが、そんな事は耳にも入れないのだ。「ドロ棒したとか、人をゴマ化したとか、そんなことならまだいゝ。警察で云っていたよ、進らのしたことはこの日本の国をブッ倒そうとしている恐しい罪だって、それをみんなお前さんの息子や山崎の息子などからだま[#「だま」に傍点]されてやったんだってよ!」――これでも分ったが、警察では、お前の母や山崎のお母さんなどには、お前さん達の息子のしたことはドロ棒したとか、強姦《ごうかん》したとかいう罪とちがって何も恥《はず》かしがることはないと云っていながら、労働者のおかみさん達には、それは世の中で一番恐ろしい罪で、みんな学問のある悪者にだまされてやったんだと云って、(殊にこっちでは)運動をやって
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