は早鐘を打った。
 飯の車が俺の監房に廻わってきたとき、今度は向うの一番遠い監房――No. 1. あたりで「ロシア革命万歳※[#感嘆符二つ、1−8−75]」を叫んでいるのが聞えた。看守はむずかしい顔をしていた。――誰か口笛で「インターナショナル」を吹いている……。俺は飯をそのまゝにして置いて――興奮し、しばらくつッ立っていた。
 丁度、飯を食い終る頃だった。デッキになっている階上の廊下をバタ/\と誰か二、三人走って行く音がした。何処かの監房が荒々しく開けられた。そして誰か引きずり出されたらしい。突然、もつれ合った叫声が起った。身体と身体が床の上をずる音がして、締め込みでもされているらしいつまった[#「つまった」に傍点]鈍い声が聞えた。――瞬間、今迄|喧《やかま》しかった監房という監房が抑えられたようにシーンとなった。俺は途中まで箸《はし》を持ちあげたまゝ、息をのんでいた。
 と、――その時、誰か一人が突然壁をたゝいた。それがキッかけに、今度は爆発するように、皆が足踏みをし、壁をたゝき出した。
 われ/\の十一月七日を勇敢に闘った同志は、そのなかを大声で何か叫びながら、連れて行かれた。俺
前へ 次へ
全40ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング