もちろん》一日の大半をタイピストというような労働者の生活からは離れた仕事で費し、帰ってきてからも炊事や、日曜などには二人分の洗濯などに追われ、それは随分時間のない負担の重い生活をしていたので、可哀相《かわいそう》だったが、彼女はそこから自分でグイと一突き抜け出ようとする気力や意識さえもっていなかった。私がそうさせようとしても、それに随《つ》いて来なかった。
私は自動車を途中で降り、二《ふた》停留所を歩き、それから小路に入り、家に帰ってきた。笠原は蒼《あお》い、浮かない顔をして室の中に横坐りに坐っていた。私の顔をみると
「首になったわ……」
と云った。
それがあまり突然なので、私は立ったまゝだまって相手を見た。
――笠原は別に何もしていなかったのだが、商会では赤いという噂《うわ》さがあった。それで主任が保証人である下宿の主人のところに訪ねてきた。ところが、彼女は以前からそこにいないということが分ってしまった。私のアジトは絶対に誰にも知らしてはならないので、彼女は自分の下宿を以前のところにしてあったのである。商会ではそれでいよ/\怪しいということになり、早速やめさせたのだった。
私
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