みの妨害をさせることが必要であると考えているのだ。そのために僚友会が動き出しているし、工場の中に青年団や在郷軍人の分会の組織を押し広げようとしていることが分る。工場が工場なだけに(軍需品工場なので)これらの組織が作られ易い危険な条件をそなえている。私たちは今三方の路から、敵の勢力と対峙《たいじ》していると云わなければならない。
 須山によると、工場の中で戦争のことをしゃべり廻って歩いている遣《や》り方は、今迄のようにただ「忠君愛国」だとか、チャンコロが憎いことをするからやッつけろとか、そんなことではなくて、今度の戦争は以前の戦争のように結局は三井とか三菱が、占領した処に大工場をたてるためにやられているのではなくて、無産者の活路[#「無産者の活路」に傍点]のためにやられているのだ。満洲を取ったら大資本家を排除して、我々だけで王国をたてる。内地の失業者はドシ/\満洲に出掛けてゆく、そうして行く/\は日本から失業者を一人もいなくしよう。ロシアには失業者が一人もいないが、我々もそれと同じように[#「ロシアには」から「同じよう」まで傍点]ならなければならぬ。だから、今度の戦争はプロレタリアのため
前へ 次へ
全142ページ中83ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング