いるだろう、じゃこの仕事をやってのけよう。そんな風で、我々の日常の色々な生活が中《なか》の同志の生活とそのまゝに結びついていた。内と外とはちがっていても、それが支配階級に対する闘争であるという点では、少しの差異がなかったからである。
五
伊藤は臨時工のなかに八九人の仲間を作った。――倉田工業では六百人の臨時工を馘《くび》きるということが愈々《いよいよ》確実になり、十円の手当も出しそうにないことが(共産党のビラが撒《ま》かれてから)誰の眼にもハッキリしてきた。その不安が我々の方針と一致して、親睦会めいた固《かたま》りは考えたよりも容易《たやす》く出来た。
女たちは工場の帰りには腹がペコ/\だった。伊藤や辻や佐々木たちは(辻や佐々木は仲間のうちでも一番素質がよかった)皆を誘って「しるこ屋」や「そばや」によった。一日の立ちずくめの仕事でクタ/\になっているみんなは甘《あま》いものばかりを食った。そして始めて機械のゴー音が無くなったので、大声で、たった一度に一日中のことをみんなしゃべってしまおうとした。
伊藤たちは次のようにやっていた。伊藤はみんなのなかでも、「あれ」ということになっ
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