言も答えないということを、こゝの細胞会議の決議として実行することにした。更にこの決議は此処《ここ》だけに止めず上層機関に報告し、それを党全体の決議とするように持って行くことにした。
 その後にTに入ったレポによると、ヒゲは更にK署からO署にタライ廻しにされ、そこで三日間朝から夜まで打《ぶ》ッ続けに七八人掛かりで拷問をされた。両手を後に縛ったまゝ刑事部屋の天井に吊《つる》し上げられ、下から其の拷問係が竹刀で殴ぐりつけた。彼が気絶すると水を呑まし、それを何十度も繰りかえした。だが、彼は一言も云わなかった。
 伊藤はそのレポを見ると、「まッ憎らしいわねえ!」と云った、彼女も二度ほど警察で、ズロースまで脱ぎとられて真ッ裸にされ、竹刀の先きでコヅキ廻わされたことがあったのだ。
 これらの同志の英雄的闘争は、私達を引きしめた。私はどうしても明日までやってしまわなければならない仕事が眠いために出来なく、寝ようと思う、そんなときに中《なか》の人たちのことを考え、我慢し、ふん[#「ふん」に傍点]張った。中の人のことを考えたら、眠いこと位は何んでもないことだった。――今中の人はどうしているだろう、殴られて
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