た。そうすれば私達が首になったとしても、残っている組織の根と緊密な外部からの連繋《れんけい》によって、少しの支障もなく仕事を継続することが出来る。それでどんな小さい話題からでも、常に本工と臨時工を接触させ、その結合をはかる方向をとることを決めた。然し同時に臨時工の間の組織も、彼等が首になって又何処かの工場を探がしあて、それ/″\の職場に入り込んで行く人間なので、それは謂《い》わば胞子だった。従って臨時工の一人々々とは後々までも決して離れてはならなかった。――私達はこれらの仕事を、首になる極く短かい期間にやってしまわなければならなかった。

 二三日して須山と街頭を取っていると、向うから須山が奇妙な手の振り方をしてやってきた。彼は何かあると、よくそんな恰好《かっこう》をした。会ってからゆっくり話すということなどは、とても彼には歯がゆいらしく、すぐ動作の上に出してしまった。私は何かあったな、と思った。私は途中の小路を曲がってくると、本当はモウ一つの小路を曲がってからお互いに肩を並らべて歩くことになっているのに、須山はモウ小走りに、やアと後ろから声をかけた。
「太田からレポがあったんだ!」と
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