》を見張っていたと云える。勿論それは私がヨリ展望のきく「地方委員会」などの仕事をしているというところからも来ているが。従って、私は自分の浮き上りということを恐れる必要がないことが分った。
私がまず気付いたことは、八百人もいる工場で、四五人の細胞だけが[#「だけが」に傍点]懸命に(それは全く懸命に!)活動しようとしている傾向だった。それは勿論四五人であろうと、細胞の懸命な活動がなかったら、工場全体を動かすことの出来ないのは当然であるが、その四五人が懸命に働いて工場全体を動かすためには、工場の中の大衆的な組織と結合すること(或いはそういうものを作り、その中で働くこと)を具体的に問題にしなければならない。そのための実際の計画を考顧しなかったなら、矢張りこの四五人の、それだけで少しも発展性のない、独《ひと》り角力《ずもう》に終ってしまうのだ。――ところが、実際には臨時工の女工たちは、私達は折角知り合っても又散り/\バラ/\になってしまう。袖《そで》触れ合うも他生《たしょう》の縁というので、臨時工の「親睦会」のようなものを作ろうとしている。又臨時工と本工とが賃銀のことや待遇のことで仲が悪いのは
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