それは当然俺がやらなけアならない。」
と云った。
私はそれに肯《うなず》いた。
伊藤は身体をこッちりと固くして、須山と私、私と須山と眼だけで見ていた。――私が伊藤の方を向くと、彼女は口の中の低い声で、「異議、な、し、――」と云った。
見ると、須山は自分でも知らずに、胡坐《あぐら》の前のバットの空箱を細かく、細かく切り刻んでいた。
それが決まった時、フト短い静まりが占めた。すると今迄気付かずにいた表通りを通る人達のゾロ/\した足音と、しきりなしに叫んでいる夜店のテキヤの大きな声が急に耳に入ってきた。
それから具体的なことに入った。――最近ビラや工新の「マスク」が、女の身体検査がルーズなために女工の手で工場に入っていると見当をつけて、女工の身体検査が急に厳重になり出している。それで当日は伊藤が全責任を持ち、両股《もも》がゴムでぴッしりと強く締まるズロースをはいて、その中に入れてはいること。彼女は朝Sの方からビラを手に入れたら、街の共同便所に入って、それをズロースに入れる。工場に入ってからは一定の時間を決めて、やはり便所を使って須山に手渡す方法をとる。ビラは昼休に屋上で撒くこと。そ
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