気付くと私は直ぐ須山のことを考えていた。だが、そんなに須山のことに立ち停《どま》っていることはよくないことなのだ。須山にしても、自分たちの置かれている情勢をハッキリと見ていれば、このことを一つの必然として、而かも不可欠のものとして理解することが出来る筈なのだ。そこに別の道或いは除けて通れる道が一つもなく、しかもプロレタリアートの解放のためにはどうしてもその道を通らなければならないとすれば、私たちはそこから何か仕事以外のもの、例えばこんな事をすることが「残酷なこと」ではないだろうかとか、又は「同情に堪えないこと」ではないだろうかとか、凡《およ》そそんなことが引き出せるわけがないのだ。
だが、会合の場所に行くまで、私の頭にあの突拍子もない切抜帳《スクラップ》で私たちを笑わせる須山の顔が来て困った。
場所は今まで三度位使ったことのある須山の昔の遊び(飲み)友達の家だった。足元の見えない土間で下駄を脱ぎ、それを懐に入れて、二階に上がって行くと、斜めに光が落ちて来て、須山の顔がのぞいた。
伊藤は壁に倚《よ》りかゝって、横坐りに足をのばし、それを自分でもん[#「もん」に傍点]でいた。私が入っ
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