皆は理窟より前に、この仕事のつらさにもってきて、その上又金まで取られたら、「くたばる[#「くたばる」に傍点]ばかりだ」と云うので、案外にも募集は不成功に終った。工場の様子では、殴ぐられてから須山の信用が急に高くなった。職工たちはそういうことだと、直《す》ぐ感激した。その代り須山はおやじ[#「おやじ」に傍点]ににらまれ出したので、ひょっとすると危いと、伊藤は云った。
「今度の慰問金の募集は、どうも会社が職工のなかの赤に見当をつけるために、ワザとやったようなところがある……?」
 私は確かにそうだ、と云った。
 すると彼女は、
「少し乗せ[#「乗せ」に傍点]られた――」
と云った。
 私は、何時《いつ》もの伊藤らしくないと思って、
「それは違う!」と云った――「俺たちはその代り、何十人という職工の前に、誰が正しいかということを示すことが出来たんだ。それと同時に、僚友会のなかに我々の影響下を作れるし、それを放って置くのではなしに、組織的に確保したら素晴しい成果を挙げ得たことになる。少しの犠牲もなしに仕事は出来ない。これらは最後の決定的瞬間にキット役に立つ。」
 伊藤は、急に顔を赤くして、

前へ 次へ
全142ページ中112ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング