なると、清川は、満洲に行っている兵士は労働者や農民で、我々の仲間だ、だからプロレタリアートの連帯心として慰問金を送ることは差支えないと云った。皆は自分の爪をこすりながら、黙ってきいていた。我々の同志は工場にいたときは資本家に搾られ、戦場へ行っては、敵弾の犠牲となっている。だが、この我々の同志を守るものは我々しかない[#「我々しかない」に傍点]、だから我々は慰問金の募集に応じて差支えない――清川の説に、今度は皆はもっともらしくうなずいた。
 見ていると、伊藤は困ったように眉をしかめていたが、
「そうだろうか――?」
と云った。
 僚友会には女工が十四五人いたが、会に出てくるものは二人位しかいなかった。それを伊藤が誘い合わせたので、六人ほど出ていた。僚友会としてはめずらしいことだった。――ところが僚友会で女が発言したことは今迄《いままで》になかったので、皆は急に伊藤の顔を見た。
「清川さんの話を聞いていると、もっともらしいが何んだか陸軍大臣の訓辞をきいているようで……」
 皆はドッと笑った。
「清川さんでも誰でも、今度の戦争が私たちのためでなくて、結局は矢張り資本家のためにやられているとい
前へ 次へ
全142ページ中109ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング