てその先き/″\で連絡をとって、組合や森本たちを指導していた。然し二十万に足りない小さい市《まち》では、それは殆んど不可能なほど危険なことだった。
十八
会合が終ると、外へは一人ずつ別々に出た。賑やかな通りをはずれて、T町の入口に来た頃、森本の後から誰か、すイと追いついてきて、肩をならべた。オヤッと思うと、それが河田だった。
――一寸これからT町へ用事があるんだ。
森本はその時フト変な予感を持った。――河田はお君のところへ行くのではないか。
河田は一緒に歩きながら、自分たちの運動のことを熱心な調子で話し出した。河田のその熱心な調子は何時でもそうだが、独断的なガムシャラなところを持っていた。それは初めての人に、無意識な反感さえ持たせた。然し森本はその調子を河田から聞いているときは、何時でも自分のしていることに、不思議な「安心」を覚えた。彼は力と云っていゝものさえ、そこから感じることが出来た。
――君はこの仕事に献身的になれるかい。
ときいた。森本は、なれるさ、と答えた。
――献身的の意味だが……。
河田はそう云って、一寸考えこんで間をおいた。――人
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