ソヴエート・ロシアの「五カ年計画」の進出、他方には国内資本家間の無駄な競争に、何時でもおびやかされていた。漁区落札数の増減はテキ[#「テキ」に傍点]面に生産高にひゞいた。――「H・S」はそれに備えるために、政府を動かして、国民一般の愛国心とソヴエート・ロシアに対する敵慨心《てきがいしん》を煽り立てなければならなかった。
今年は更にロシアが組織的に、色々な手段を借りて、わが優良漁区の蚕食をやるという確実な噂さが立っていた。「日露」と「H・S」の株価は傾きかけた水のように暴落していた。
『H・S』のそういう情勢に対しては、河田は「工場細胞」の積極的な活動、「ニュース」による暴露、煽動、新しい「細胞」の獲得は云うまでもないとして、更にこの当面の「戦々兢々」たる動揺をつかんで、職工が労働者としての自分の立場と利益を擁護するために、
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「工場委員会[#「工場委員会」に傍点]」の自主化[#「の自主化」に傍点]
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の闘争を起すように努力しなければならない事を提議した。
労働者がどんな資本の「攻勢」にもグイと持ちこらえ得るためには、何より工場全部の労
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