ったゴミ/\した工場は閉鎖される。労働者はドシ/\街頭におッぽり出される。幸いに首のつながっている労働者は、ます/\科学的に、少しの無駄もなく搾《しぼ》られる。他人事ではないさ。――こういう無慈悲な摩擦《まさつ》を伴いながら、資本主義というものは大きな社会化された組織・独占の段階に進んで行くものなのだ。だから、産業の合理化というものは、どの一項を取り出してきても、結局資本主義を最後の段階まで発達させ、社会主義革命に都合のいゝ条件を作るものだけれども、又どの一項をとってみても、皆結局は「労働者」にその犠牲を強いて[#「犠牲を強いて」に傍点]行われるものなんだ。――「H・S」だって今に……なア……。
笠原は眼をまぶしく細めて、森本を見た。
――「Yのフォード」も何時迄も「フォード」で居られなくなるんでないか、と思うがな。
十二
始業のボウで、二人が跳ね上った。笠原はズボンをバタ/\と払って、事務所の方へ走って行った。
気槌《スチーム・ハンマー》のドズッ、ドズッという地ゆるぎが足裏をくすぐったく揺すった。薄暗い職場の入口で、内に入ろうとして、森本がひょいと窓か
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