一分の隙《すき》もない程に連絡がとれて居り、職場々々の職工たちは、コンヴェイヤーに乗って徐々に動いて来る罐が、自分の前を通り過ぎて行く間に割り当てられた仕事をすればいゝというようになってしまったのですから、たまりません。縁曲機《フレンジャー》なども、もとは職工がついていたが、今使っている機械は自動化[#「自動化」に傍点]されて、一人も要らなくなったんです。
――ん。
――今工場ではブリキ板を運ぶのに、トロッコを使っていますが、あれも若しコンヴェイヤー装置にでもしてしまうような事があったら、そこでも亦《また》人がオッ出されるわけでしょう。
――なるだろう。なるね。
――なるんです。製図室や実験室の人達には懸賞金[#「懸賞金」に傍点]がかけられているんです。
――うまいもんだ。
――その人達は何時でも、アメリカから取り寄せて、モーターやボイラーの写真の入った雑誌を読んでいます。
――これから色々僕たちの仕事を進めていく上に、職工のことゝは又別に、会社の所謂《いわゆる》「高等政策」ッてものも是非必要なのだ。で、上の方の奴をその意味で利用することを考えてもらいたいと思うんだ。
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