はアッ! と思った。
――裏切った?
思わず大きな声を出した。
――ン。
――本当か?
――ホントウ。
知らないうちに握りしめていた彼の掌は、ネト/\と汗ばんでいた。
――ワカル……。
――ん、分る。
――ハズノナイ……。
――ん? ん?
――ワカルハズノナイコトマデ……。
――分る筈の……、ん。
――ミンナ……。
――皆、
――ワカッタ。
――……!
――ジケンハ……。
――事件? ん。
――ジケンハ……。
――ん、分った。
――キョウサントウ!
――矢張り!
矢張りか、と思った。彼は胴締めをされたような「胸苦しさ」を感じた。
――サイ……。
――ん?
――サイゴマデ……。
――ん。
――ガンバレ。
――分った!
――アノ……。
その時、彼はギョッとして、身体を跳ね起した。廊下を歩いてくる靴音を聞いたと思ったからだ。
そしてそれは本当に靴音だった。――何か騒がしい事が、向う端で急に起ったらしかった。
形式だけの検束をうけて、留置場の中で特別の待遇をうけて居た鈴木が、この明け方、首を縊《くく》っていたのを、看守の巡査が発
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