らわせば、職工の全部は「忽《たちま》ち」自分のもとに雪崩《なだれ》を打ってくるのは分りきったことだ、と。――然し、それがこんなに惨めになるとは本当だろうか※[#感嘆符疑問符、1−8−78] そして一斉の拍手! 専務は何よりこの裏切られた自分自身の気持に打ちのめされてしまった。それにもっと悪いことには、専務は問題を両方から受けていた。一方には、自分自身の地位について! これは充分に専務を気弱[#「気弱」に傍点]にさせていた。「金融資本家」に完全に牛耳られて、没落しなければならない「産業資本家」の悲哀が、彼の骨を噛んでいた。そればかりか、今年ロシアが蟹工船の漁夫供給問題の復仇として、更にカムチャツカの、優良漁区に侵出してくることは分りきっていた。
けれども工場長が口をきった。――危い、と見てとったのだ。
――とにかく重大問題で、専務が全部の職工にお話ししたいことがあるんだから……それは、まずそれとして……。
――おッ! 一寸待ってくれ!
森本の後から、ラッカー工場の細胞が針のような言葉を投げつけた。
――お、俺だちば、ばかりの力でやったか、会ば……。それば、それば!
言葉より興
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