は、彼等は朝鮮や、台湾の殖民地と同じように、面白い程無茶な「虐使」が出来た。然し、誰も、何んとも云えない事を、資本家はハッキリ呑み込んでいた。「国道開たく」「鉄道敷設」の土工部屋では、虱《しらみ》より無雑作に土方がタタき殺された。虐使に堪《た》えられなくて逃亡する。それが捕《つか》まると、棒杭《ぼうぐい》にしばりつけて置いて、馬の後足で蹴《け》らせたり、裏庭で土佐犬に噛《か》み殺させたりする。それを、しかも皆の目の前でやってみせるのだ。肋骨《ろっこつ》が胸の中で折れるボクッ[#「ボクッ」に傍点]とこもった[#「こもった」に傍点]音をきいて、「人間でない」土方さえ思わず顔を抑えるものがいた。気絶をすれば、水をかけて生かし、それを何度も何度も繰りかえした。終《しま》いには風呂敷包みのように、土佐犬の強靱《きょうじん》な首で振り廻わされて死ぬ。ぐったり広場の隅《すみ》に投げ出されて、放って置かれてからも、身体の何処かが、ピクピクと動いていた。焼火箸《やけひばし》をいきなり尻にあてることや、六角棒で腰が立たなくなる程なぐりつけることは「毎日[#「毎日」に傍点]」だった。飯を食っていると、急に、
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