、しかも、それが輕いぢやないか! 意地の惡い時には、惡いものだ。三本! たつた三本しか入つてゐなかつた。
「君、三本しか無いんだ。」
「いゝ、いゝ! 本當に澤山! 有難う、有難う。」木下は子供が頂戴々々をするときのやうに、兩手を半ば重ねて出した。
「一本で澤山だ!」
 側に立つてゐた巡査がいきなり二本取り上げてしまつた。瞬間二人は、二人とも「もの」も云へず、ぼんやりした。
「のませてやる事すら、過ぎた事なんだぜ!」
 何が「ぜ」だ! 龍吉は身體が底からブル/\顫はさつてくる興奮を感じた。然し、
「お願ひです。僅か三本です。それに木下君は特に煙草……。」
 みんな云はせなかつた。「誰が、僅か三本だつて云ふんだ。」
 木下は石のやうな固い表情をして、だまつてゐた。たつた一本のバツトをのせたきりになつてゐる彼の掌が分らない程に顫えてゐた。――二人が出て行つてしまつてから、龍吉は木下の氣持を考へ、半分自分でも泣きながら巡査の返へしてよこしたバツトを粉々にむしつて[#「むしつて」に傍点]しまつた。
「えツ糞、えツ糞、糞ツ! 糞ツ! 糞ツ! 糞ツ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」

 三日になり、
前へ 次へ
全99ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング