うすればよかつたか? 誰が一體その目隱しを取り除けてやり、彼等の催眠術を覺ましてやらなければならないのだ?――これア案外さう俺達の敵ではなかつたぞ、龍吉も他の人達と同じやうにさう思つた。
 終ひには、檢擧された人の方で、酷き使はれてゐる××が可哀相で見てゐられない位になつた。どんなボロ工場だつて、そんなに[#「そんなに」は底本では「ぞんなに」]「しぼり」はしなかつた。
「もう、どうでもいゝから、とにかく決つてくれゝばいゝと思ふよ。」頭の毛の薄い巡査が、青いトゲ/\した顏をして、龍吉に云つた。「ねえ、君、これで子供の顏を二十日も――えゝ、二十日だよ――二十日も見ないんだから、冗談ぢやないよ。」
「いや、本當に恐縮ですな。」
「非番に出ると――いや、引張り出されると、五十錢だ。それぢや晝と晩飯で無くなつて、結局たゞで働かせられてる事になるんだ、――實際は飯代に足りないんだよ、人を馬鹿にしてゐる。」
「ねえ、水戸部さん。(龍吉は名を知つてゐた。)貴方にこんな事を云ふのはどうか、と思ふんですが、僕等のやつてゐることつて云ふのは、つまり皆んな「そこ」から來てゐるんですよ。」
 水戸部巡査は急に聲
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