を入れて、思はず息を殺してゐたが、ホツとすると、急に不自然に大聲で笑ひ出した。が、「痛た、痛た、痛た……。」と、笑聲が身體に響いて、思はず叫んだ。
演武場では[#「演武場では」は底本では「濱武場では」]、齋藤が×××れたので氣が×ひかけてゐる、と云つてゐた。それは、齋藤が取調べられて、「お定まり」の××が始まらうとしたとき、突然「ワツ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」と立ち上ると、彼は室の中を手と足と胴を一杯に振つて、「ワア――、ワア――、ワア――ツ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」と大聲で叫びながら走り出した。巡査等は初め氣をとられて、棒杭のやうにつツ立つてゐた。皆は變な無氣味を感じた。××、それが頭に來た瞬間、カアツとのぼせたのだ、氣が狂つたのだ、――さう思ふと、誰も手を出せなかつた。
「嘘《たら》だ。やれツ!」
司法主任が鉛筆を逆に持つて、聽取書の上にキリ/\ともみこみながら、低い、冷たい聲で云つた。巡査等は無器用な舞臺の兵卒のやうに、あばれ馬のやうに狂つてゐる齋藤を取りかこんだ。(以下十五行削除)
齋藤はそのまゝ十日も取調べをうけなかつた。そのうち三日程演武場にゐて、監
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