張り一番大きな、根本的なものだと思ふんだ。」龍吉は何かを考へて、フト言葉を切つた。「××的理論なくして、××的行動はあり得ないツて言葉があるさ、君も知つてる有名な奴さ。けれども、それはそれだけぢや本當は足りないと、俺は思つてるんだ。その言葉の底に當然のものとして省略されてる大物は、何んと云つたつて情熱だよ。」
「線香花火の情熱はあやまるよ。牛が、何がなんであらうと、然し決してやめる事なく、のそり/\歩いてゆく。それが殊に俺達の執拗な長い間の努力の要る運動に必要な情熱ぢやないか、と思ふんだ。」
「さうだ。情熱は然し、人によつて色々異つた形で出るものだよ。俺たちの運動は二三人の氣の合つた仲間ばかりで出來るものぢやないのだから、その點、大きな氣持――それ等をグツと引きしめる一段と高い氣持に、それを結びつけることによつて、それ等の差異をなるべく溶合するやうに氣をつけなければならないと思ふんだ。――それア、どうしたつて個人的に云つて不愉快なこともあるさ。だが勿論そんなことに拘はるのは嘘だよ。俺だつて渡のある方面では嫌なところがある。渡ばかりぢやない。然し、決してそれで分離することはしないよ。それ
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