豕
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)李汾《りふん》は
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]が啼いて
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李汾《りふん》は山水が好きで四明山《しめいざん》にいた。山の下に張という大百姓の家があって、たくさんの豕《ぶた》などを飼ってあった。永和の末であった。ちょうど秋の夜で、中秋の月が綺麗であるから、李汾は庭前《にわさき》を歩いた後に、琴を弾いていると、外の方で琴に感心しているような人の声がした。李汾は夜更けにこんな処へ何人《だれ》が来たろうと思って、
「何人だね、この夜更けにやってきたのは」
と言うと、外から女の声で、
「私は秀才の琴を聞きにあがったのですよ」
と言った。李汾は不審に思って戸を開けてみると、若い女が来て立っていた。李汾が、
「あなたはどうした方です」
と聞くと、女は、
「私は張の家の者でございますが、今晩はお父さんもお母さんも留守でございますから、そっとお目にかかりにまいり
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