、なんだかお気もちが悪いから、もすこしして、お伺《うかが》いすると申しております」
「気もちが悪いなら、私がお対手《あいて》をするのだから、よくなったらいらっしゃいって」
婢はお辞儀をしてから扉《ドア》を開けて出て往った。
「お茶のかわりに、つまらんものをさしあげましょう」
女は壺の取手に手を持って往った。
「もうどうぞ、すぐ失礼しますから」
「まあ、およろしいじゃありませんか、何人《たれ》も遠慮する者がありませんから、ゆっくりなすってくださいまし、このお婆さんでおよろしければ、何時《いつ》までもお対手をいたしますから」
女は壺の液体を二つのコップに入れて一つを讓の前へ置いた。それは牛乳のような色をしたものであった。
「さあ、おあがりくださいまし、私も戴《いただ》きますから」
讓はさっさと一ぱい饗応《ごちそう》になってから帰ろうと思った。
「では、これだけ戴きます」
讓は手に執《と》って一口飲んでみた。それは甘味のあるちょっとアブサンのような味のするものであった。
「私も戴きます、召しあがってくださいまし」
女もそのコップを手にして甞《な》めるようにして見せた。
「折角《せ
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