なったので、ひどく娼婦の女兄弟から冷遇せられるようになった。しかし、それでもまだ棄《す》てられるほどではなかったが、間もなく瘡《おでき》が出来て、それが潰《つぶ》れて牀席《ねどこ》をよごしたので、とうとう逐《お》い出された。
羅は困って乞食《こじき》になった。市の人は羅の瘡が臭いので遠くからそれをさけた。羅は他郷でのたれ死をするのが、恐ろしいので、乞食をしながら西へ西へと返っていった。毎日シナの里数で三、四十里も歩いて、やっと汾の境までいったが、敗れた着物を着てひどく汚くなっている自分の姿を顧《かえり》みると、村の門を入っていって村の人に顔を合せることができなかった。しかし、それでも故郷が恋しいので、ためらいためらい歩いて村の近くまでいった。
日がもう暮れていた。羅は山寺へいって宿をかろうと思った。その時向うから一人の女が来た。それは綺麗な仙女《せんじょ》のような女であった。女は近くなると、
「どこへいらっしゃるのです。」
といって訊いた。羅はほんとうのことを話した。すると女がいった。
「私は出家《しゅっけ》です。山の洞穴《ほらあな》の中に家があります。おとめしてもよろしゅうござ
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