方の知己《しりあい》か」
「これは、わたくしの女でございます、南三復と関係してこの児を生みました、二人は南三復に殺されました」
吏はまた叱った。
「これ、そんなことをもうしてはならんというに、南は有名な世家だ、そんなことをする人柄じゃない」
「いや、南でございます、南三復はわたくしの家へ来て、わたくしの眼を窃んで、わたくしの女をだまして、児を生ませました、村の衆も知っております」
「それでは、府廨へこい、府廨で検べる」
吏は女と児の死体を舁《かつ》がせ、廷章を伴れて引きあげて往ったが、廷章の詞は理路整然としていて誣告《じょうだん》でもないようであるから、南を呼びだすことにして牒《つうち》を南の家へだした。南は恐れて晋陽の令をはじめ要路の吏に賄賂を用いたので、断獄《さいばん》はうやむやになって南はそのままになり、廷章は女と児の死体をさげわたされて事件は落着した。
南はすずしい顔をして外出ができるようになった。その南の許へかの媒婆が来た。
「へんなことを聞いたものでございますから、心配しておりましたが、何もなくて結構でございました」
「いや、あんな奴にかかりあっちゃかなわないね、そこ
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