汪士秀
蒲松齢
田中貢太郎訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)汪士秀《おうししゅう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四十あまりの時|銭塘江《せんとうこう》を
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汪士秀《おうししゅう》は盧州《ろしゅう》の人であった。豪傑で力が強く、石舂《いしうす》を持ちあげることができた。親子で蹴鞠《しゅうきく》がうまかったが、父親は四十あまりの時|銭塘江《せんとうこう》を渡っていて、舟が沈んで溺れてしまった。
それから八、九年してのことであった。汪は事情があって湖南へいって、夜、洞庭湖《どうていこ》に舟がかりした。その時はちょうど満月の夜で月が東の方にのぼって、澄んで静かな湖の面は練ったようになっていた。汪は美しい月の湖上をうっとりと眺めていると、不意に五人の怪しい者が水の中から出て来て、持っていた大きな敷物を水の上に敷いたが、その広さは半畝《はんぽ》ばかりもあるものであった。一行はその上に酒肴をたくさん並べて酒盛の用意をした。肴を入れた器と器の触れる響がしたが、それは温かであつぼったい響で、陶器のような焼物の響ではなかった。
そのうち
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