りでむしあつかった。孔生は斎園《さいえん》の亭《あずまや》に移った。その時孔生の胸に桃のような腫物《はれもの》ができて、それが一晩のうちに盆のようになり、痛みがはげしいので呻き苦しんだ。公子は朝も晩も看病にきた。孔生は苦痛のために眠ることもできなければ食事をすることもできなかった。
二三日して孔生の腫物の痛みは一層劇しくなった。従って食物もますます食べられないようになった。そこへ公子の父もきたが、どうにもしようがないので公子と顔を見合わして吐息するばかりであった。その時公子が言った。
「私はゆうべ、先生の病気は、嬌娜《きょうだ》がなおすだろうと思って、おばあさんの所へ使いをやって呼びに往かしたのですが、どうも遅いのですよ」
そこへ僮子が入ってきて言った。
「お嬢さんがお見えになりました」
公子の妹の嬌娜と姨《おば》の松姑《しょうこ》が伴れだって来た。親子はいそいで内寝《いま》へ入った。しばらくして公子は嬌娜を伴れて来て孔生を見せた。嬌娜の年は十三四で、はにかんでいる顔の利巧そうな、体のほっそりした綺麗な少女であった。孔生は女の顔を見て苦しみを忘れ、気もちもそれがためにさっぱりとし
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