れた飛脚の魂で、今にその手紙を尋ねているので、「状がここにあるぞう」と、云って呼んでも来るのであった。
神の峰であったか陽貴山の山であったか、其処には陰火が山をぐるりととり巻くことがあって、それを見た者は必ず死んだ。陰火は到る処に燃えもすればふうわりふうわりと飛びもした。
狸も人をたぶらかした。村の老人が通っていると、狸が木の葉を身につけて人間に化けているので、「そんなことでは駄目だ、こういうふうにしろ」と、云って狸を欺して袋に入れ、殺して汁にたいたと云うこともあった。
しばてんが麦のかさうれ時に出て、夕方野に遊んでいる小供を伴れて往った。そのしばてんは小坊主になって人が通りかかると、「相撲とろか、相撲とろか」と、云っていどんだ。小坊主の癖に生意気だから投げ飛ばしてやろうと思って、相撲をとってみると反対《あべこべ》に投げ飛ばされるので、これはおかしいと思ってまたかかって往くとまた投げ飛ばされる。そうして小坊主を対手にしていると朝になって通りかかった者に注意せられ、気が注《つ》いてみると己《じぶん》は荊棘《いばら》と相撲をとって血みどろになっている。そのしばてんの一種のえんこうは水
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