ち待ちした。連城はいった。
「私はここへ来るまでに、手足がふらふらして、すがる所がないようでした。私は自分の望みがとげられないじゃないかと思うのです。このうえにもよく考えておこうじゃありませんか。そうしないと生きかえって後に、自由になれないのですから。」
そこで二人は伴《つ》れだって廂《ひさし》の中へ入ったが、しばらくして連城は笑っていった。
「あなたは私が憎いのですか。」
喬は驚いてその故《わけ》を訊いた。連城は顔をぽっと赧《あか》くしていった。
「ことが諧《ととの》わなくて、再びあなたに負《そむ》くようなことがあってはと思います。私は先ず魂を以て報《むく》いたいと思います。」
喬は喜んで歓恋《かんれん》のかぎりを尽した。で、そこにさまようていてすぐは出なかった。そして三日も廂の中にいた連城は、
「諺にも醜婦総て須《すべから》く姑障《こしょう》を見るべしということがあります。ここにそっとしているのは、将来のはかりごとじゃないのです。」
といって、そこで喬を促して入っていかした。そして喬はわずかに死骸を置いてある室へ入るなり、からりと生きかえった。家の者は驚いて水を飲ました。喬
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