ないで、私に殉《じゅん》じてくださるとは、あなたは何という義に厚い方でしょう。しかし、今世ではどうすることもできないのですから、どうか来世をちかってください。」
喬は顧の方を見ていった。
「君は仕事があるだろうからいってくれたまえ。僕は死ぬるのが楽しみで、生きたいとは思わないから。ただ君に頼みたいのは、連城が来世にどこへ生れるということと、僕もゆくゆくそこへいけるようにしてもらいたいことだけだ。」
顧は承知していってしまった。白衣を着ている女は、連城に喬のことを訊いた。
「この方は、どうした方です。」
そこで連城は喬のことを精しく話した。女はそれを聞いていかにも悲しくてたまらないという容《さま》をした。連城は喬にいった。
「この方は私と同姓で、賓娘《ひんじょう》さんというのです。長沙の史太守《したいしゅ》の女《むすめ》さんです。来る時|路《みち》が一緒でしたから、とうとう二人でこうして仲好くしているのです。」
喬は女の方をきっと見たが、そのさまがいかにもいたわしかったから、そこで精《くわ》しく女の身の上を訊こうとしていると、顧がもう引返して来た。顧は喬に向っていった。
「僕が君
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