いで行脚の僧に渡した。血が上衣から袴を濡らした。僧は薬とその肉を調合して三つの丸薬を作って、日に一回ずつ飲ましたが、三日してその丸薬がなくなると、連城の病気は物をなくしたように癒《なお》ってしまった。孝廉は約束を践《ふ》んで喬に連城をめあわそうと思って、先ずそのことを王の方に知らした。王は怒って官に訟えようとした。孝廉は当惑した。そこで御馳走をかまえて喬を招き、千金を几の上に列べて、
「ひどく御恩にあずかったから、お礼をしたい。」
といって、そこで約束に背くようになった由《わけ》を話した。喬は顔色をかえて怒った。
「僕が体をおしまなかったのは、知己に報いようとしたからです。肉を売るのじゃないです。」
といって、止める袖をふり払って帰った。連城はそれを聞いてたえられなかった。で、媼《ばあや》をやって喬をなぐさめて、そのうえで、
「あなたのような才能をお持ちになった方は、いつまでもこうしていらっしゃらないでしょうから、美しい方にはお困りにならないでしょう。私は夢見が悪いから、三年するときっと死にます。こんな死ぬるような者は人と争わないでもよろしゅうございましょう。」
といわした。喬は
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