かった。連城は人に逢うと喬のことをほめ、そのうえ媼《ばあや》をやって、父の命だといつわって金を贈って喬のくらしを助けた。喬はひどく感じていった。
「連城こそ自分の知己《ちき》である。」
喬は連城のことばかり考えて食にうえた人のようであった。間もなく連城は塩商の子の王化成という者と許嫁《いいなずけ》になった。喬はそこで絶望してしまったが、しかし夢の中ではまだ連城を思慕していた。
それから間もなく連城は胸の病気になって、それがこじれて癒《なお》らなかった。インドの方から来た行脚僧《あんぎゃそう》があって自分から孝廉の家へ出かけていって、その病気を癒すことができるといったが、ただそれには男子の胸の肉を一切れ用いて薬を調合しなくてはならなかった。孝廉は人を王の家へやって婿に知らした。婿は笑っていった。
「馬鹿|爺親《じじい》、俺の胸の肉を※[#「宛+りっとう」、第4水準2−3−26]《えぐ》らすつもりか。」
使が返って婿のいったことを伝えた。孝廉は怒って人に話していった。
「肉を割いてくれる者があれば、女を婿にやろう。」
喬はそれを聞くと孝廉の家へいって、自分で白刃を出して、胸の肉をそ
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