偸桃
蒲松齢
田中貢太郎訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)山車《だし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「怨」の「心」に代えて「皿」、第3水準1−88−72]《わん》
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少年の時郡へいったが、ちょうど立春の節であった。昔からの習慣によるとその立春の前日には、同種類の商買をしている者が山車《だし》をこしらえ、笛をふき鼓《つづみ》をならして、郡の役所へいった。それを演春《えんしゅん》というのであった。
私も友人についてそれを見物していた。その日は外へ出て遊んでいる人が人垣を作っていた。堂の上には四人の官人に扮《ふん》した者がいたが、皆赤い着物を着て東西に向きあって坐っていた。私は小さかったからそれが何の官であったということは解らなかった。たださわがしい人声と笛や鼓の音が耳に一ぱいになっていたのを覚えている。
その時一人の男が髪を垂らした子供を伴《つ》れて出て来て、官人の方に向って何かいうようなふりであったが、さわがしいので何をいって
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