はまた次の丸薬を出したが、それは自分が嘗めてから桑の口に納れた。桑は腹の中が火のように熱して、精神のいきいきとしてくるのを覚えた。蓮香は言った。
「これで癒った」
李は※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《とり》の鳴くのを聴いて※[#「にんべん+方」、第3水準1−14−10]※[#「にんべん+皇」、120−17]《ほうこう》として帰って往った。蓮香は桑の病後の体を養うには物を食べさせないようにしなくてはいけないので、桑が故郷へ帰ったように見せかけて、桑の友達をこさせないようにしながら、夜も昼も桑の傍にいて看護した。李も毎晩来て手助けをしながら蓮香に姉のように事《つか》えた。蓮香もまた李をいたわってやった。
桑は三箇月してもとのとおりの体になった。李は三四日おきにしかこないようになった。たまにくることがあってもちょっと桑を見ただけで帰って往った。いっしょにいてもさえない顔をしていた。蓮香はいつも留めていっしょに寝ようとしたが肯《き》かなかった。ある時桑は李の帰ろうとするのを追って往って抱きかかえて帰ってきたが、それは葬式の時に用いる茅《かや》で作った人形のように軽かった。李は逃
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