幽霊の衣裳
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鶴谷南北《つるやなんぼく》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三代目|尾上菊五郎《おのえきくごろう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぬう[#「ぬう」に傍点]と
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三代目|尾上菊五郎《おのえきくごろう》は怪談劇の泰斗として知られていた。其の菊五郎は文化年代に、鶴谷南北《つるやなんぼく》の書きおろした『東海道四谷怪談』を木挽町《こびきちょう》の山村座《やまむらざ》で初めて上演した。其の時菊五郎はお岩《いわ》と田宮《たみや》の若党《わかとう》小平《こへい》、及び塩谷《えんや》浪人|佐藤与茂七《さとうよもしち》の三役を勤めたが、お岩と小平の幽霊は陰惨を極めたもので、当時の人気に投じて七月の中旬から九月まで上演を続けた。
其の後|天保《てんぽう》になって菊五郎は、堺町《さかいまち》の中村座《なかむらざ》の夏演戯《なつしばい》で亦《また》『四谷怪談』をやる事になり、新機軸を出すつもりで、幽霊の衣裳に就いて考案したが、良い考えが浮ばなかった。
ちょうど
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